私が原村に住まいを求めた7,8年前は、雪が少ない土地と聞いていた。あとで雪が降らぬほどの寒冷地と知るのだが、なにせ、横浜育ちゆえ、「雪が降らない」イコール「そんなに寒くはないのだ」と勝手な解釈をしていた。
ところが、翌年80年ぶりとかの大雪になった。久しぶりに出かけると、高速道路は止まっている。国道20号線をこわごわ走り、やっとの思いで、原村の我が家にたどりつくと、玄関まで雪が積もり、とうとう入れず、近くの旅館に泊まり、そのまま帰るなどと笑い話のような経験ばかりだった。
それから数年、80年ぶり(?)がつづき、「ほんとに雪の少ない所? いったい何なんだ、この雪は」と疑問を持ち始めた昨年から、暖冬といわれ、大雪を覚悟したら、不思議に今年は雪が少ない。が、雪が降らぬほど、凍る寒冷地にもどっている。

歳とってから寒冷地、やめなさいよの、声の中で、今年こそ、この冬は住めなかったけれど、次の年は徹底的に冬につきあってみようと思っている。暖かいところより、寒さのほうが知恵が働く、と考えるのはやせ我慢だろうか?
先日、時折出かける近くの「香草庵」に寄った。外観は英国風の洋館だが、お蕎麦屋さんだ。標高は我が家と変わらない、少し低いから1200mくらいに位置すると思う。入口のそばにおびただしいバケツ。バケツの中で水が凍ってる。ご主人に伺ったら、100個の氷のランタンを作っているのだそうだ。

バケツの中で、水はマイナス10度で1センチ凍るそうだ。従って、このバケツの中に氷が出来るのは約1週間後。はじめは氷をひっくりかえし、ロウソクを立てる空間をバケツの中で作っていたそうだが、2年目知恵が働いてバーナーであけた方が効率がいいことに気づいたそうだ。
嬉しそうに一つひっくりかえして見せてくださった。
「いやー寒いですからね、ならそれなりに楽しまなきゃ」
関西から原村へ移住なさったご主人の顔は、おそばを打つときの真剣な厳しい表情はなく、少年のように照れていた。

「私も来年作ります。ご指導くださいね」と言いつつ、2月完成した100個の氷のランタンが置かれている夜、おそばを食べに伺わねばと、、、どんな美しい光を氷の中で放つのだろう! 凍る夜空のお星様と、氷のランタン、、、、、
その夜、我が家の外の寒暖計はマイナス15度を示していた。
■手打ちそば処 香草庵
〒391-0115
長野県諏訪郡原村17217-3693
Tel&Fax 0266-70-2287
営業時間 11:30〜14:30(但し売り切れまで)
18:00〜21:00(貸切そば会席1組限定)
定休日 火・水・年始・2月(GW・8月は無休)
(2006.1.30 写真も 小林節子)
【バックナンバー】
第3回 二十日正月は原村でのんびり! (2006.1.23)
第2回 祭りは年寄りの知恵の伝承 (2006.1.16)
第1回 原村の新年は静かで穏かです (2006.1.9)
第4回 寒いほうが知恵が働く?
小林 節子

